COVID-19:住宅ローンについて 一定期間の無条件での返済猶予を認めることを求める提言(緊急提言6)

新型コロナウイルス感染拡大に伴い日本全国に緊急事態宣言が出されたのち、様々な政策の実行、多くの方々の努力により、日本国内の感染の拡大は収束しつつあります。この間、多くの方々が新型コロナウイルス感染症に罹患し、お亡くなりになられた方々がいらっしゃいます。謹んでお見舞い申し上げるとともに、哀悼の意を表します。

私たち弁護士有志は、我が国は、戦後これまでこれほどまで甚大な人的被害を及ぼす感染症拡大という事態を経験しておりませんでしたが、数多くの甚大な自然災害を経験し、その災害時に様々な災害法制度を作成し、活用してきた実績がありますので、それらの経験を活かして対策すべきである旨提言をしてまいりました。

これまでの甚大な自然災害時の経験を踏まえて考えますと、新型コロナウイルス感染拡大が収束しつつある今、復興への道筋をつけるにあたってとても重要な時期にあると考えます。すでに、新型コロナウイルス感染拡大を原因とした倒産件数の増大や雇用不安が生じております。そして、その規模は、これまで経験したことがない非常事態に発展する可能性すら指摘されております。

このような状況下での喫緊の課題は、住居の確保です。現在、住居を賃借されている方々に対する支援について、国や地方自治体で議論されていますが、住宅ローンを抱えている方々に対しての支援についての議論が不十分であると思われます。「住居の確保」は、人が生きていくうえで最低限必要なことであり、そして住宅ローンを抱えた方々に対する支援は、「住居の確保」という観点では、住居を賃借されている方々に対する支援と同様です。

そこで、私たちは住宅ローンを抱えている方々の支援として、以下の提言をいたします。

提言 住宅ローンを抱えている方々からの返済猶予の要請に対し、最低1年間、無審査・無条件で、住宅ローンの返済を猶予した上、猶予中の利子負担を免除するなど、住宅ローンを抱えている方々が安心して生活できるような対策を講じること

理由 
①住宅の確保はすべての方々に共通した最重要政策の一つである

新型コロナウイルスによる収入の減少が多くの世帯で生じていることは周知の事実であり、緊急事態宣言が解除されたとしても、経済が回復し、収入が安定するまで一定の時間を要することは明らかです。このような状況下で、住宅を失う可能性についての不安を解消することは、国民が安心して経済復興に向けて進むためには不可欠な政策です。

②住宅ローン支援と賃借料支援の両輪が住宅確保にとって不可欠

「住宅の確保」は、住宅ローンを抱えている方、賃貸住宅を借りて生活している方、いずれにも共通した課題であり、その両方の支援は必要です。住宅ローン支援をせずに、住宅ローンを抱えた方が経済的に破綻した場合、住宅確保の問題が現実化し、社会的な問題となるのは、過日の外国でのサブプライムローン問題の経験上も明らかです。

③無審査・無条件での期間延長を認めることの重要性

住宅ローン返済猶予を希望する債務者に対しては、少なくとも1年間、無条件・無利子で、住宅ローンの返済を猶予するように、国が金融機関に対し要請することが重要です。また、その要請を実効化させるためには、金融機関が利子分の免除を容易に行うことができるよう、国が金融機関を支援する仕組みが不可欠です。

さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響で収入が減少している世帯が多数に及んでいることが明らかであるところ、返済猶予の可否について審査を要することは、金融機関・債務者双方にとっていたずらに負担を増やすことになりかねません。金融機関側も、債務者からの要請があれば、審査を行わずに、返済猶予を認めるべきです。

その他、住宅ローンを抱えた方々の様々なニーズに応じた柔軟な対応を取ることも重要です。

住宅ローンを抱えた方々が経済破綻し、自己破産件数が増大すると社会経済にとってもマイナス要因となります。大規模災害と同様に、住宅ローン、賃借料、いずれに対しても、その負担者のニーズに応じた支援が、新型コロナウイルス感染拡大からの復興へは重要です。

以上

令和2年5月28日

新型コロナウィルス対策に「災害対応」を求める弁護士有志

【呼び掛け人】太田賢二・伊藤考一(北海道)、吉江暢洋・佐藤英樹(岩手)、新里宏二・内田正之・山谷澄雄・宇都彰浩・小野寺宏一・勝田亮(宮城)、及川善大(山形)、渡辺淑彦・松尾政治・平岡路子(福島)、舘山史明(群馬)、中野明安・岡本正・加畑貴義・神田友輔・在間文康(東京)、永田豊(千葉)、二宮淳悟(新潟)、永野海(静岡)、澤健二(愛知)、繁松祐行(大阪)、永井幸寿・津久井進・辰巳裕規(兵庫)、大山知康(岡山)、今田健太郎・工藤舞子(広島)、堀井秀知(徳島)、野垣康之(愛媛)、松尾朋(福岡)、奥田律雄(佐賀)、鹿瀬島正剛(熊本)、黒木昭秀(宮崎)、小口幸人(沖縄)

【賛同人】村山敬樹・西尾弘美(北海道)、森田祐子(秋田)、太田秀栄・石井恵子・菊池優太(岩手)、小林素(福島)、花島伸行・小川航平・加瀬谷拓・太田伸二・菅野真光・篠塚功照・松浦健太郎・中尾健一・半澤力・浅沼賢広(宮城)、関夕三郎(群馬)、田中記代美(茨城)、山本達夫(埼玉)、佐藤隆太(千葉)、平澤慎一・大沼宗範・李桂香(東京)、横地明美(愛知)、石坂俊雄(三重)、国府泰道・針原祥次・中島清治・青木佳史・亀山元・安原邦博(大阪)、森川憲二・安井健馬・田崎俊彦・名倉大貴・吉田哲也・羽柴修・亀若浩幸・坂本知可・古殿宣敬・菱田昌義・河瀬真・相原健吾・菊田大介・野田倫子・守谷自由・鈴木尉久・小牧英夫・中里江理人・藤本久俊(兵庫)、砂本啓介(広島)、長谷義明(山口)、大塚喜封(徳島)、春田久美子(福岡)、正込一朗(鹿児島)、藤井光男(沖縄)

※( )内は所属地の都道府県名

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