COVID-19:支援金・助成金等に対する差押え禁止の特例法の制定を求める提言(緊急提言3)(緊急提言3)

国は、新型コロナウィルス対策支援のための特別定額給付金について、差押を禁止する法律を制定すべく、議論を進めています。私たちが、緊急提言2で提言してきたことであり、早期の実現が望まれます。
しかし、新型コロナウィルス対策支援のために支給される支援金・助成金等の金銭はこれだけではありません。事業者の雇用の維持のために支給される雇用調整助成金、売上が減少した事業者に支給される持続化給付金や、地方自治体による様々な支援も存在します。これらの助成金、給付金についても、特別定額給付金と同様の配慮が必要だと考えます。
大規模災害時に支給される、被害者生活再建支援金や災害弔慰金については、その制度上、差押えが禁止されています。生活再建支援金は、住宅の再建に利用するため、災害弔慰金は慰謝の措置と遺族の生活を維持するために支給されるものですから、いずれも差押えにより目的に沿った利用ができなくなることを防ぐ必要から、差押えが禁止されています。
また、東日本大震災や熊本地震等の際には、義援金についても差押えを禁止する特例法が作られました。義援金は、生活の維持、再建のために利用して欲しいという善意により集まったお金を被災者に配分するものであることから、目的に沿わない利用がなされないように、差押えを禁止したものです。
新型コロナウィルス対策支援のための様々な給付金、助成金は、いずれも、災害時に支給される支援金等と性格を同じくする、住民の生活や事業継続に必要不可欠なものと言うべきです。災害時における制度の取扱を参考に、差押えを禁止すべく、下記のとおり提言いたします。

1 雇用調整助成金についても、差押えを禁止する特例法を制定すべきです。

雇用調整助成金は、事業主が、緊急事態宣言を受けて休業する場合、従業員の雇用を維持し、休業手当を支給した場合に、一定の条件の下、支給される者です。
その目的は、雇用の維持であり、これが差し押さえられてしまえば、目的のために利用することができず、雇用の維持が図られなくなってしまうおそれがあり、助成金を支給した意味が失われます。
助成金を、その目的の通り活用するためには、差押えを禁止し、雇用維持のために確実に利用できる様に手当てしておく必要があります。

2 持続化給付金についても、差押えを禁止する特例法を制定すべきです。

持続化給付金は、新型コロナウィルス感染症の影響により、売上が減少した事業者に対して、一定の条件の下、法人には最大200万円、個人事業主には最大100万円が支給されるものです。
持続化給付金は、事業者の売上減少に対して支給される給付金ですから、その目的は、事業の継続を支え、新型コロナウィルス感染拡大が収束した後の事業再生の糧とすることにあります。
そうであれば、持続化給付金は、事業者が計画を持って事業継続に利用していくことが予定されていますが、差押えを受けることになっては、計画に従った利用ができず、事業者は事業の継続を
諦めざるを得なくなる可能性が生じます。
また、持続化給付金の目的からしても、事業継続のために利用されることなく、一部の債権者の満足のためだけに利用されることとなれば給付金を支給した意味が失われます。法人であっても、その売上により生活を営む国民がいます。事業の継続を図ることの目的は、その事業によって生活している国民の生活を守ることであるはずです。国民一人ひとりの生活を維持するためにも、ウィルス感染拡大の収束後の経済活動の再生のためにも、事業の継続は極めて重要であり、そのための給付金の差押えを許すことによって、給付した意味を失わせることは絶対に避けなければなりません。
できるだけ早期に、持続化給付金の差押えを禁止する特例法を制定すべきです。

3 その他、今後、国が新型コロナウィルス対策支援のために新たに創設する給付金、助成金や、都道府県等の地方自治体がこれまでに創設し、又は、今後創設する給付金等についても、差押えを禁止する特例法を制定すべきです。

新型コロナウィルス対策支援のためには、現段階で支給が決まったもの以外にも、更に、様々な給付金等が必要となるでしょう。
また、国の制度の他に、都道府県等の地方自治体が、独自に地域住民のために支援制度を定めることなどが考えられます。
既に、子育て世帯への現金支給や休業要請に応じて休業している飲食店等に対する休業協力金など、実際に支援が実現しつつある自治体もあります。
これらの給付金などは、いずれも、受給者の手に渡り、受給者がその必要な支出に利用することにより、新型コロナウィルス感染拡大による影響をできる限り少なく抑え、生活や事業を維持し、収束後に再生を図ることを目的としています。
これらの金銭は、その性質上、全て、特別定額給付金、雇用調整助成金、持続化給付金と同様のものであり、受給者の手に渡り、受給者が自らの判断で利用できなければ、支給の意味を失うものと言わざるを得ません。

令和2年5月1日

 

新型コロナウィルス対策に「災害対応」を求める弁護士有志

【呼び掛け人】太田賢二・伊藤考一(北海道)、吉江暢洋・佐藤英樹(岩手)、新里宏二・内田正之・山谷澄雄・宇都彰浩・小野寺宏一・勝田亮(宮城)、及川善大(山形)、渡辺淑彦・松尾政治・平岡路子(福島)、舘山史明(群馬)、中野明安・岡本正・加畑貴義・神田友輔・在間文康(東京)、永田豊(千葉)、二宮淳悟(新潟)、永野海(静岡)、繁松祐行(大阪)、永井幸寿・津久井進・辰巳裕規(兵庫)、大山知康(岡山)、今田健太郎・工藤舞子(広島)、堀井秀知(徳島)、野垣康之(愛媛)、松尾朋(福岡)、奥田律雄(佐賀)、鹿瀬島正剛(熊本)、黒木昭秀(宮崎)、小口幸人(沖縄)

【賛同人】秀嶋ゆかり・西尾弘美・村山敬樹・荒井剛(北海道)、近江直人・森田祐子・江野栄(秋田)、長谷川頌・畠山将樹・川上博基・吉江暢洋・長谷川大・安澤裕一郎・平本丈之亮・山中俊介・太田秀栄(岩手)、布木綾・小向俊和・菅野高雄・庄司智弥・松尾良成・須田晶子・伊東満彦・栗原さやか・井口直子・菅野真光・坂本仁・坂口真理子・加瀬谷拓・後藤雄大・伊藤佑紀・太田伸二・松浦健太郎・佐藤篤・及川雄介・倉林千枝子(宮城)、脇山拓(山形)、平間浩一・唐牛歩・西山健司・小林素(福島)、吉村一洋(新潟)、伊澤正之(栃木)、猪股有未・原田英明・関夕三郎・鈴木克昌・斉藤匠・西村直行・名古拓磨・稲毛正弘・古平弘樹・石島研二・野上佳世子(群馬)、鈴木隆文・及川智志・鈴木勝之・髙橋修一・辻慎也・栗屋威史・長浜有平・佐藤隆太(千葉)、滝沢香・有本真由・大沼宗範・酒井桃子・杉浦ひとみ・平澤慎一・森田太三・上山直也・山本政明・松本明子・上柳敏郎・三輪記子・佐藤太史・幸田雅治・小海範亮・小室光子・李桂香(東京)、藤田温久・多湖翔・村瀬敦子(神奈川)、山岸重幸(長野)、植松真樹・太田吉則・大多和暁・阿部浩基・小笠原里夏(静岡)、木下実・春山然浩・坂本義夫・橋爪健一郎(富山)、野条泰永(福井)、澤健二・岩城善之(愛知)、石坂俊雄(三重)、佐藤正子・土井裕明(滋賀)、諸富健・金杉美和・松本隆彦(京都)、砂川辰彦・瓦井剛司・小橋るり・青木佳史・村瀬謙一・奥田愼吾・木口充・明賀英樹・小久保哲郎・篠原俊一・国府泰道・赤津加奈美・菅野園子・島村美樹・金子武嗣・有村とく子・冨田真平・安原邦博・中島清治・浜田雄久・足立朋子・髙橋敏信・亀山元・薬袋真司・吉岡一彦・保木祥史・白井啓太郎・針原祥次・福原哲晃(大阪)、道上明・森川憲二・安井健馬・松山秀樹・亀田廣美・南野雄二・大塚明・田崎俊彦・佐伯雄三・小牧英夫・名倉大貴・森川太一郎・吉田哲也・中山泰誠・相原健吾・安原浩・後藤玲子・渡部吉泰・守谷自由・中川裕紀子・藤本尚道・曽我智史・白子雅人・吉江仁子・大槻倫子・藤原精吾・濱本由・増田正幸・藤本久俊・河瀬真・菱田昌義・岡村勇人・木村裕介(兵庫)、金原徹雄(和歌山)、三木悠希裕(岡山)、砂本啓介・友清一郎(広島)、大田原俊輔(鳥取)、長谷義明(山口)、大塚喜封・櫻井彰(徳島)、伊野部啓(高知)、春田久美子・渡邊純・椛島敏雅(福岡)、正込健一朗・雨宮敬之(鹿児島)、保田盛清士・仲松正人・山城圭・仲宗根翔太・藤井光男・稲山聖哲・武田昌則(沖縄)

【呼び掛け人37名、賛同人184名】※( )内は所属地の都道府県名

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