令和6年能登半島地震に関する緊急提言(3)

 私たち、「一人ひとりが大事にされる災害復興法をつくる会」は、令和6年能登半島地震に関して、令和6年1月4日、①一刻も早く広域避難の体制を整備して災害関連死を防ぐとともに、②被災県が中心となって、災害ケースマネジメントの実施に向けた連携の場を開設すべきことを提言し、同7日、災害発生から7日目を迎えたことから、①自治体内の部署間の横断的な連携、②防犯対策の徹底、③罹災証明書の発行を迅速かつ合理的に等、一人ひとりの被災者の目線に立ち、直ちに対応できる10項目を提言しました。

 依然として、被災地での救助活動が続き、被災者は、避難所などでの過酷な避難生活を強いられ、既に災害関連死と見られる事態が生じています。

 一方で、政府は特定非常災害の指定を行い、また、地元自治体を中心に、二次避難所などへの広域避難の計画も進みつつあり、被災者の命や権利を守る体制が整備されつつあります。

 このような状況を踏まえ、さらに検討すべき事項について提言することとしました。

 

1 被災自治体職員の支えを早急に

 避難などの事務作業を行うのは、地元自治体職員ですが、彼らもまた、被災者のひとりであることを忘れてはいけません。自身や家族が被災している中、被災住民のために動いている自治体職員を最大限支え、心身のケアを行う必要があります。

 国や県は、そうした地元自治体の職員をバックアップし、あるいは、そうした事務作業を行うために、災害対応の経験のある他地域の自治体職員などを中心に、職員派遣を検討すべきです。また、必要に応じたケア体制も必要です。

 

2 福祉応援職員を派遣しやすくする体制の整備を

 被災地では、多数の要配慮者が過酷な環境に置かれ、地元の福祉職員のみで十分な対応をしていくことは困難な状況にあり、他地域から福祉応援職員が派遣されるべきです。

 しかし、派遣元の福祉施設の人員にも必ずしも余裕があるわけではないことから、派遣元が派遣をしやすくなるよう体制を整備する必要があります。例えば、今回行われた福祉施設の人員配置基準の柔軟化など現場ニーズに即した措置を積極的に講じるべきです。

 

3 地元を壊さない広域避難を

 広域避難に際しては、家族やコミュニティの関係性が、できる限り途切れないように実施されるべきです。そして、できる限り早期に、地元に戻ることができるよう、住宅再建の支援も充実させなければなりません。被災者生活再建支援金に加えて、国や自治体による追加支援も検討しておくべきです。生活再建への道筋を示すことが、地元を離れる被災者の不安を和らげることに繋がります。

 また、広域に避難した被災者を把握し、その後も支援を継続するために、避難する被災者の情報は確実に自治体が把握し、適切に管理した上で、避難先での救助を実施し、また、生活再建に向けた支援を提供していかなければなりません。

 そのために、被災者の情報を把握、管理して、継続した支援を行う者と必要な範囲で共有できるよう、体制を整えなければなりません。

 

4 罹災証明書の発行を合理的に

 大きな被害が生じた珠洲市を含め、各地で罹災証明書の申請受付が始まりました。第2弾の提言でも触れたように、罹災証明書の発行は被災者支援の目的に沿って迅速かつ合理的に行う必要があります。

 そもそも、罹災証明書の発行について、被災者からの申請を必要としない取扱も検討されるべきですが、それができないとしても、少なくとも罹災証明の申請にあたっては、被災者の負担となるような資料の提出を求めることのないよう注意しなければなりません。

 現状においては、本人確認書類なども厳密に求めるべきではありません。他人の名前をかたって、罹災証明書を取得するメリットなどほぼないからです。

 また、申請に際して、壊れた住居の写真などを求めるべきではありません。そもそも、自己判定方式でない限り、写真の提出を求める必要はありません。

 罹災認定の方法についても、これまでの大規模災害で行われてきたように、航空写真やドローンを活用した簡易判定、一定のエリア内の建物はすべて全壊と判定するエリア認定など、考え得る手段をできる限り活用して、手続を進めるべきです。

 このような方法は、被災者ばかりでなく、事務を担当する職員の負担も軽減することになるはずです。

 

5 時代に即した災害救助を 

 地震発生から1週間以上が経過し、災害救助法第4条1項の各種救助が実施されることになると思います。これまでの災害においては、災害救助事務取扱要領に基づき、現物給付の原則による救助が行われてきましたが、著しい効率の悪さや社会経済情勢との乖離など、批判が強いところです。

 応急修理制度が利用される場合においても、施工主体を特定の指定業者に限定する取扱は、修理の完了を遅らせることになりかねませんので、柔軟な運用を可能にするべきです。

 また、広域避難を行い、ある程度通常の生活が可能となった被災者に対しても、現物でしか支援できないとすれば、極めて迂遠な事態となります。

 実態に即した支援を可能とするためには、現物給付にこだわるのではなく、広く災害救助法第4条3項を活用し、金銭を給付することによって救助を進めるべきです。

 

以上

2024(令和6年)1月11日
一人ひとりが大事にされる災害復興法をつくる会
共同代表 新里 宏二
共同代表 天野 和彦
共同代表 津久井 進

 

令和6年能登半島地震に関する緊急提言(3)(PDF)