被災者一人ひとりの視点に立った「一人ひとりが大事にされる災害復興法」の成立に向け、7月18日に盛岡市の岩手県産業会館でシンポジウムを開催しました。
「一人ひとりが大事にされる災害復興法をつくる会(以下、つくる会)」が主催するこのシンポジウムは、宮城・岩手・福島の3県で行う連続シンポジウムの第二弾として、5月の仙台会場に引き続いての開催です。
現在の災害復興に関する法律や制度は、法律そのものが被災者の生活再建を十分にサポートできるようなものになっていないことに加えて、法律の枠内で可能な施策も地方自治体の運用によって制限されているケースがあります。東日本大震災で被災した人の生活を立て直すことだけでなく、今後同様の災害が起こった際に十分な支援ができるよう、法律の改正や成立を目指して「つくる会」は活動しています。
まず、基調報告として、吉江暢洋弁護士(岩手弁護士会)が実例を踏まえながら、住宅再建をめぐる問題点を説明しました。
土地区画整理事業による高台移転は、宅地引き渡し後2年以内に工務店などと建築契約することや、復興公営住宅に入居する際は、同一市町村内に住居がある人を連帯保証人につけること等の条件に触れながら、住宅再建のハードルが非常に高く設定されているため被災者の生活状況に合った復興が困難になっていると報告しました。
次に、半壊・全壊と行政から認定された住宅で被災直後から住み続けている岩手県や宮城県の方々からの当事者報告がありました。
石巻で被災された方は、避難所は人があふれていたため身をおくことができず、被災直後から津波と地震で住むことが困難になっていた自宅に、家族4人で生活することを余儀なくされました。しかし、避難所でも仮設住宅でもなかったため、物資の提供などの公的な支援は不十分で、住宅再建のための支援金も限定的なため、現在も壊れたままの自宅で生活しているということでした。
他にも、盛岡市内のみなし仮設住宅で生活されている方や、原発事故による放射能汚染の影響を考慮して岩手に自主避難した方などが、窮状を訴えました。
続いて、石巻で在宅被災者の支援を行っている一般社団法人チーム王冠代表の伊藤健哉さんからの報告がありました。住宅再建の費用を確保できないため水没した1階が使用できず、2階だけで生活している家庭などの事例を紹介しながら、在宅被災者の状況に関してはそもそも行政が調査を行っていないため全く把握されていないことが問題だとして、在宅被災者に対する金銭的な支援に加えて、実態調査の必要性を訴えました。
また、大船渡など東北全域で被災者支援を行っている公益財団法人共生地域創造財団の多々良言水さんは、被災が引き金になり、家庭環境の問題や貧困の問題が表出してきている現状を紹介しました。
当事者や支援者からの報告に続いて、「在宅避難者をめぐる現状と課題」と題したパネルディスカッションを行いました。
宇都彰宏弁護士(仙台弁護士会)は、被災者の生活再建に関する法律を整理した上で、法律そのものに不備があると訴えました。
また、「つくる会」共同代表の津久井進弁護士は、は95年の阪神淡路大震災の経験を踏まえて、今ある個々バラバラの法律をまとめて一体的に運用できるような、「災害時の住まいの確保に関する基本法」が必要だと述べました。
そして、「つくる会」共同代表で一般社団法人パーソナルサポートセンターの代表理事でもある新里宏二が、民主党の岡田代表が同日にパーソナルサポートセンターを視察に訪れたことに触れ、国や政治家に対しても在宅避難者に対する支援の必要性を訴え続けていくことが大切だと述べました。
最後に、閉会挨拶として、一般社団法人SAVE IWATE もりおか復興支援センターの阿部知幸さんは、一人ひとりが大事にされる災害復興法の制定を目指して共に粘り強く取り組んでいきたいと宣言し、閉会となりました。
シンポジウムには約80人が参加。メディアの取材もあり、この問題に対する関心の高さがうかがえました。
次回のシンポジウムは、8月に福島県郡山市で開催します。
新たな災害復興法が制定されることを目指し、活動は継続していきます。